未来の年表

未来の年表
河合雅司(2017)講談社現代新書

 

この本の中で著者が主に指摘しているのは、2024年問題(団塊世代がすべて75歳以上となる=約5年後)、2042年問題(高齢者数が約4,000万人とピークを迎える=約25年後)、100年後に日本の人口は約5,000万人に半減するという3点である。それに対して著者は10の対策を処方箋として提案しており、非居エリアを明確化するなど「戦略的に縮む」ことが必要と述べている。

 

(感想)
未来のいつ頃、どのような問題が起こるかを、具体的なデータに基づき予測している点が面白かった。数値が示されているので、どの程度、深刻な問題なのかを自分で考えて判断することできる。
約25年後に高齢者数が激増し、社会の支え手である勤労世代が減少することは、ほぼ確実に予測できる未来とされる。国や自治体においては、約25年後を見据えた中長期的な対策という視点が今から必要だということだろう。
ただし、約25年後を過ぎると高齢者数は減少に転じるということでもあり、介護、年金、福祉予算の増大などの問題は、一時的な一回限りの危機という見方もできると思った。その後、こうした問題は、ある程度、自然に解消していくのではないかとも思われ、そのあたりの予測も知りたいと思った。
それに対して少子化は50年、100年と長期的に続く問題であり、長期的に取り組んでいく必要のある問題といえる。高齢化と少子化は、一つセットの問題と考えられがちだが、これは分けて考えたほうがよい。
著者は「このまま少子高齢化が放置されたならば、2065年以降の日本は取り返しのつかない状況に追い込まれるだろう」と警告し、対策については、「今を生きる人々だけが「おいしい思い」をする政策はとるべきではない」と述べている。
未来の危機を分かりやすく示してくれたのがこの本の価値だが、長期的に考えることは難しい。今日明日の生活で精いっぱいとか、老後の不安に追いかけられている状況にあっては、50年先や自分が死んだあとの日本のことまで考える余裕などもてないだろう。皆が自分の目先のことだけではなく、遠い未来の日本の姿まで想像できるような、心の余裕をもてるような仕組みがまずは必要なのではないかと思った。

 

(主なデータ)

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2017年)
   死亡者数のピーク=167万9000人(2039年、2040年)
   65~74歳人口のピーク=1768万人(2016年)
社人研「日本の世帯数の将来推計」(2013年)
社人研「第15回出生動向基本調査」(2015年)
   国民希望出生率=1.8
社人研「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」(2015年)
   完結出生児数=1.94人
社人研「第15回出生動向基本調査(独身者調査)」(2015年)
   交際相手のいない未婚者(18~34歳)=男性:69.8%、女性59.1%
内閣府高齢社会白書」(2017年版)
   認知症患者=730万人(2025年の推計値)
   一人暮らし高齢者数=762.2万人(2035年の推計値)
総務省「就業構造基本調査」(2012年)
   働きながら介護をしている人=291万人
   介護休業制度の利用者=38万人
   50~54歳女性の有業率=73.2%
公益財団法人家計経済研究所「在宅介護のお金とくらしについての調査」(2013年)
   在宅介護の費用=月額平均6万9000円
更生労働省「人口動態統計月報年計」(2016年)
   離婚率=1.73(人口1000人あたり)
   婚姻数=62万523組
厚生労働省社会保障に係る費用の将来推計」(2012年)
   社会保障給付費=120兆円(2015年)→149兆円(2025年)
厚生労働省国民生活基礎調査」(2016年)
   65歳以上の老老介護=54.7%
内閣府「育児と介護のダブルケアの実体に関する調査」(2016年)
   ダブルケアする人=25万2900人
内閣府「地域の経済2016」
   2030年度に生産力不足となる道府県数=38道府県
国土交通省「国土のグランドデザイン2050」(2014年)
   サービス施設が立地する自治体の規模=有料老人ホーム(50%:4万2500人-80%:12万5000人)
総務省「住宅・土地統計調査」(2013年)
   全国の空き家=820万個
厚生労働省「厚生労働白書」(2015年版)
   生涯未婚率=男性24.2%、女性14.9%(2015年)→29.0%、女性19.2%(2035年
内閣府「結婚・家族形成に関する意識調査報告書」(2010年)
   未婚者の多い属性=年収300万円未満の20代・30代男性、年収600万円以上の30代女性
内閣府少子化と夫婦の生活環境に関する意識調査」(2012年)
   出合のきっかけ=社会人になってからの仕事関係(男性:31.1%、女性33.9%)
日本医師会総合政策研究機構「地域の医療提供体制の現状と将来-都道府県別・二次医療圏別データ集」(2014年)
国土交通省「首都圏白書」(2012年)
内閣府「2030年展望と改革タスクフォース報告書(資料集)」(2017年)
   世界人口(国連推計)=73憶5000万人(2015年)→85億人(2030年)
農水省「2050年における世界の食料需給見通し」(2012年)
内閣府「目指すべき日本の未来の姿について」(2014年)
   移民を毎年20万人受け入れ出生率回復=1憶1404万人(2110年人口の推計値)
第12回21世紀成年者縦断調査(2014年)